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  • 執筆者の写真しのづか裕子

樋口さんとおはなししよう会 その1


Seeds展最終日の2022年11月27日に、ギャラリースペースの一角を空けて、陶芸の技法書「やきものの科学」(2021.5.28発刊、誠文堂新光社)の著者、樋口わかなさんをお迎えして、”樋口さんとおはなししよう会”を開催しました。

本当にお茶を飲みながら、のんびり談笑を想像していらしたと思われる樋口さんには、がっつり講演会のような内容になってしまい、皆さんは大満足でしたが、大変ご苦労をおかけしてしまいました。

当日の内容を記録するために動画を撮らせていただきましたが、プライバシーの観点から掲載することは控えることにいたしました。当日お世話になりました皆様には大変ご面倒をおかけしました。ありがとうございました。


のんびり茶話会の予定でしたが、お客様は主に陶芸関係の先輩、後輩、陶芸教室の同僚や知り合いなど、既に本を購入して臨まれた方々も多く、その他学芸員、教員をされていらっしゃる方など、本当に興味のある方々の本気の会でした。

結果として、内容も私達にはとても面白かったのですが、陶芸に専門的に関わっていない方々にはよくわからないものになっております。

ブログで公開してどうするのだろう、とも思いますが、私自身が忘れてしまいそうな気がするので、こんなに時間が空きましたが動画を読み込んでかいつまんで記録しておくことにしました。

長くなるので2部に分けております。宜しければご覧ください。


※Qは質問、Aは樋口さんのおはなし、Rはそれに対する結果やエピソードです。




Q 釉薬の溶け具合でとてもピンホールが出ることについて


A 元々の焼成温度を30℃落として30分ほど練らしてから焼成を終わってみては?

30℃落とせばもう流れないけれど固まり切っていないのでより馴染ませることができるのでは?


R 結局それでは改善はしても解決はしなかった。改めてゼーゲル式を出した結果、シリカ分が足りないことが分かったので、長石を2%増やしたことでピンホールは消えて解決した。



Q 青い釉薬を作るために、今まで炭酸バリウムを熔融材に使ってきたのだが、買えないようになってきたこともあり炭酸リチウムに変えて新しく釉薬を作ったところ、とても激しい貫入が入るようになってしまった。

本を読んで水簸をすると良くなるという記述があったのでやってみたが、あまり効果的ではなかった。


A 水簸というのは主に原料内に混入している可溶性塩類や不純物を取り除くことを目的にしている。原料や粘土に水を入れて、沈殿したところの上水を捨てることを何度か繰り返すことを言う。

明度系釉薬や木灰などを主に使った釉は可溶性塩類が多く入っている。ヌルヌルするのがそれである。釉調に影響を与えやすいので取り除いて使うために水簸を行う。

この場合水簸は関係ないかも。


関係あるかは分からないが、炭酸バリウムについて。

アルカリ土類元素の一つであるバリウムBaは他に比べてイオン半径(原子のサイズ)が大きい。炭酸バリウムBaOはバリウムイオンBaと酸素イオンOが結合する時、Baイオン半径が大きいために原子核同士の距離が遠くなり結合が弱くなる。

全ての原子はケルビン温度0度では振動しないが、温度が上がるに従って振動が大きくなる。BaOのように原子核の距離が離れているものはより大きな振動を許すことになる

それは熱膨張と関係がある。

原子レベルで見ると、昇温いう現象は原子の振動が大きくなるということである。振動が大きくなるということは熱膨張として観察される。

バリウムを他の原料に置き換えるなら、少しずつイオン半径の小さい原料を試す可能性もある。ストロンチウム、カルシウム、マグネシウムetc。

貫入は釉薬と素地の冷却収縮率の違いによって入る。釉調を変えたくない場合、素地の調合を変えるのが一般的である。   


(その2につづく)




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